50歳からのスタートアップ

中小企業診断士

(本日のコンテンツ)
1 最初は、従業員視点だった
2 経営者視点、そして起業者視点へ
3 起業者はしたいこと、従業員はやるべきこと
4 経営支援の方針

皆様、おはようございます。
前回、登録までのお話をいたしましたが、結局、登録日(2013年4月1日)の時点で、私は、50歳になっており、遅々とした歩みではありますが、この日から定年後に向けた取り組みを始めることになりました。

50歳からのスタートアップです。

1 最初は、従業員視点だった

中小企業診断士にはなりましたが、プロコンとしての自信は全くありません。そこで、中小企業を支援する協力会社への人事異動を希望しつつ、プロコンとしての素養を高めることにしました。
何から始めるかも全くの手探りなので、まずは、戦略からと、市の図書館にあるハーバードビジネスレビュー(戦略)を読破したり、ドラッガー、ポーター、コトラー、ミンツバーグといった有名どころを手当たり次第に読み進め、図書館で読めるものは全部読んで、買える範囲で買い求めもしましたが、この時点(登録3年目辺り)での経営支援に当たっての悟りは、次のようなものに過ぎませんでした。

  1. 知識労働者は、「私は、何をしたいのか」ではなく、「我々は、組織のために何をなすべきか」を考えなくてはならない。
  2. 会社は従業員を、なかんずく知識労働者は互いを尊重しなければならない。
  3. 会社は、「我々は、組織のために何をなすべきか」の「何を」の基礎となる「経営理念」を持たなくてはならない。

皆様の会社の中にも「お前は何がしたいんだ。」とかいう人いますよね。当時は、そういう時、「こいつ馬鹿じゃねえの。会社の(設立趣旨から導かれる)目的に沿ってしかできねえだろうが」とか思っていたものです。

2 経営者視点、そして起業者視点へ

いずれはプロコンと思う割には、全然、軸足が定まっていなかったのですが、実務従事とか、限られた営業機会なんかで、経営者の方とのコミュニケーションを重ねた結果、1に書いた悟りは違うなと思うようになりました。
例えば、大会社でもゴーイングコンサーンを経営理念と堂々と言い切るところがあるぐらいですから、中小企業の経営者の方とお話ししていても、経営理念なんてなくても全く困ってもいなかったし、なくても生活のために頑張っていたのです。

では、会社の本質とは、集金マシーンなのでしょうか?
幸之助さんの残した「企業は社会の公器」は嘘なのでしょうか?

この疑問は、かなり長い期間、私を悩ませましたが、経営者の方とのコミュニケーションを活かしつつ、書籍などの資料研究後、(過程は、飛ばしますが、)登録10年目前の現在、経営支援に当たっての悟りは、次のように変わっています。

  1. 会社は、プロジェクトを実施する器に過ぎない。
  2. プロジェクトの目的は、金儲けから社会貢献まで、通常は、起業者※が自由に決めることができる。
  3. キャッシュフローの確保は、プロジェクトを実施するための絶対的制限事由に過ぎない。

※ 上場してしまったりして自由に決められなくなる場合もあるでしょうし、起業者ではない経営者であっても、極めてステークホルダー調整に長けている人であれば、会社のプロジェクトの目的を自分のwantに合わせることは可能かもしれません。

1は、株式会社の発祥が航海に対する出資からであったことを思えば、当然の帰結といえ、映画やアニメの製作委員会は、現代の帆船なのかもしれません。
また、2であるからこそ、起業には夢があるのでしょう。社会貢献でも、法律ギリギリでも、自分のやりたいことをやればいいのです。
なお、3は意外かもしれませんが、北野武の発言(好きなように映画を撮りたいんだけど、ある程度売れないと撮り続けることができなくなる、だから全くの好き勝手ではダメで、売ることも考えて撮らなきゃならない、というような発言)から気付いたものです。
キャッシュフローの確保は、プロジェクトを継続するためには、絶対的なものですが、その本質は、当該継続に当たっての制限事由に過ぎないのです

3 起業者はしたいこと、従業員はやるべきこと

だからこそ、起業者が「私がしたいこと=プロジェクト目標」に邁進する中で、従業員は、「起業者のプロジェクト目標達成のために何をなすべきか」を考えなくてはならないわけです。

まさに起業者だけが「やりたいこととやるべきことが一致するとき、人生は輝くのでしょう」(ヲ)

私の場合、この考え方に至ったことが定年起業に踏み切るきっかけでもありました。さすがに一億総起業社会では、何も回らなくなるかもしれませんし、皆様に押し付ける気もありませんが、きっと長い間、従業員生活を送ってきたのだろうし、残り少ない人生、堀場さんではないですが、ちょっとぐらい「おもしろおかしく」やってもいいのではないでしょうか
(ヲタク語録)
STAR DRIVER 輝きのタクトの「やりたいこととやるべきことが一致する時、世界の声が聞こえる」のもじりです。さすがに世界の声が聞こえていては「電波入ってんのか」になりそうなので、題名にあやかり、人生は輝くとしていますが…

なお、この悟りに至る過程には、ジム・コリンズのビジョナリー・カンパニーシリーズの影響も大きかったように思います。このシリーズは、しっかりした経緯理念によるカルト集団のような企業がどれほど大きな力を発揮するかとか(SONYの件、読めばしびれますよ。)、従業員を奮い立たせるようなプロジェクト目標=BHAG(Big Hairy Audacious Goal)がどれほど力を発揮するのかをボーイング社の例を挙げながら解き明かすなど、極めて興味深い内容が満載です。私も全巻持っていますが、経営者の相談相手たる士業の皆様には、このシリーズ全ての読破を強くお勧めします。

また、このシリーズは、主要な米国企業を客観的に観察した結果から書かれており、「従業員を尊重しない企業であっても、継続的に成長を続け、世界的な企業になっている例はある。」とのレポートまであります。従業員を尊重しない会社は、少なくとも、長期的には発展しないでほしいと思う私の幻想は、この事実によっても、完全に打ち砕かれました。サラリーマンにとっては、残酷な話ですが、それが真実なのでしょう。

4 経営支援の方針

そうなると、今、私が総合診断をするとなれば、まず、「会社のプロジェクトの目的」を、次に「当該目的が、経営者のやりたいことと一致しているか」を尋ね、これが一致していなければ、まずは、その事情を聴き、一致していれば、そこで初めて、プロジェクトが、その目的に対して適切かを確認していくことになります。実務従事では、中々、ここまではさせてもらえませんが…

なお、見直し後のプロジェクトを推進するための具体的施策に関する助言を中小企業診断士試験を受けた人に説明するとすれば、生産・技術と財務・会計に対応する課題には、精度の高い正解があるので、これらの正解に沿って、強くお勧めをする。一方、組織・人事とマーケティングに対応する課題には、一応の正解しかないので、一応のお勧めをするというところでしょうか。だって、想像してもらえれば分かると思いますが、「こうすれば絶対に従業員のやる気がマックスになりますよ。」とか「こうすれば絶対に売れまくりですよ。」なんて、言ったところで当たりますか?

ここに気付いたときに、実務補習で一緒だったMさんの言葉を思い出しました。
「コンサルに高い金を払ってもオペレーション以外、まともな提案がない。」(当時、Mさんの所属する会社は、業績が悪化していたので、三千万円払って、コンサルタントに経営改善の提案をさせていた。)
でも、当たり前ですよね。仮に、頼んだ相手がマッキンゼーで、7つのSを駆使したとしても、生産・技術、財務・会計以外の正解提案は、極めて困難でしょう。ある意味、当然の帰結です。
フレームワークを駆使する程度で、組織・人事やマーケティングの正解に至れるのなら、大企業は、全社、右肩上がりですよ。

要は、生産・技術や財務・会計については精度の高い正解を助言できますが、組織・人事やマーケティングについては一応の正解しか言えないわけです。だから、正解のない世界での重責に耐えるため、T先生の本棚にはGLA主宰者の著書があったし、稲盛さんは出家するしかなかったのかな?と、今では、思っています。

誤解のないように付言しますと、私は、以前(盛和塾解散前)、社長さんが盛和塾の塾生である実務従事事業を受ける機会がありました。私よりも若い社長さんでしたが、従業員の物心両面の幸福を追求し、ひたすら愚直に京セラフィロソフィを実行しておられる姿には、本当に頭の下がる思いでした。
実務従事事業なので、提案はしましたが、心の中では、とても私如きがという気持ちです。
そういったこともあって、私は、稲盛さんのような経営者が増えてくれれば、社会はもっと良くなると信じています。

そう、信じるの世界なんですね。

だから、自分が正しいと信じることであっても、それでお金をもらうのは違うのかなと、そうなるとプロコンでお金をもらっていいのは、精度の高い正解のある世界で訴求できるコンテンツを提供するか、あなたの代わりにお金を取ってきました、の補助金の申請代行ぐらいな気もします。
ダブルライセンスがお勧めは、定年後すぐには稼げない、が理由の第一ではありますが、そんな気持ちも動機の一つにはなっています。

まあ、独占業務士業の場合、あなたの代わりに勝訴してきましたとか、あなたの代わりに許可を取ってきましたとか、お客様が当たり前にお金を出すビジネスモデルが存在しますので、お金はこちらで稼ぎつつ、特に、組織・人事の経営支援は、こうしてくれれば少しは社会がよくなるだろうという、信じる気持ちに沿った無償の提案でいいのかもしれないなと…

さて、歯切れの悪い終わり方ではありますが、まごうことなき私の現状ではありますので、自らの更なるブレークスルーに藻掻きつつ、次回は、中小企業診断士試験の合理的な攻略法を述べたいと思います。

それでは、皆様、家内安全を第一に、無理のない範囲でお取り組みください。

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