行政書士試験記述式過去問分析(平成27年度)

行政書士

(本日のコンテンツ)
1 平成27年度(問題44)概念型・条文型
2 平成27年度(問題45)条文型
3 平成27年度(問題46)条文型

皆様、おはようございます。
今回で全過去問の解説を終了するので、次回は、全過去問のまとめをしたいと思います。

それはさておき、第三問は、多少金があると、こうなっちゃうんですかねえ…

1 平成27年度(問題44)概念型・条文型

(問題文)
Xは、Y県内で開発行為を行うことを計画し、Y県知事に都市計画法に基づく開発許可を申請した。しかし、知事は、この開発行為によりがけ崩れの危険があるなど、同法所定の許可要件を充たさないとして、申請を拒否する処分をした。これを不服としたXは、Y県開発審査会に審査請求をしたが、同審査会も拒否処分を妥当として審査請求を棄却する裁決をした。このため、Xは、申請拒否処分と棄却裁決の両方につき取消訴訟を提起した。このうち、①裁決取消訴訟の被告はどこか。また、こうした裁決取消訴訟においては、一般に、②どのような主張が許され、③こうした原則を何と呼ぶか。40字程度で記述しなさい。

※ 丸数字、赤字は、理解を助けるためにまるやが付したものです。

(当時の正解例)
①Y県が被告となり、②裁決固有の瑕疵のみを主張できる。③原処分主義という。(34字)

(まるや解説:標準)
仮に、Xさんが申請の段階で、行政書士であるあなたのところに相談に来たとします。通常は、この段階で申請の可否は分かります。
また、分からなければ、行政書士として、まだまだ精進が足りないというところです。(-人-)

しかし、普通なら許可されるだろうという案件で(多くの場合は迷惑施設であるという一事で)不許可を食らうときがあります。あなたが特定付記をしており、血気盛んであれば、審査請求を代理することもできるので、「これはけしからん!」と、自信をもって、開発審査会に審査請求をしたとします。

とはいえ、こういう政治的な不許可については、中々、開発審査会ではひっくり返りません。(役所の中でもベテランになればなるほど、「ボスがダメっつてんだし、裁判で負けたら許可したらいいや、損害賠償食らっても俺の金じゃないしな。」ぐらいのものです。)そんなせいか(あまり効果がないせいか?)特定付記をしている行政書士は、もの凄く多いのですが、特定付記を活用した(審査請求を代理した)という話は、終ぞ聞きません。

まあ、そうなると業腹であっても、Xさんと一緒に、協力関係にある弁護士事務所に行くことになるのですが、訴訟をするにしても、普通は、開発許可申請の不許可処分の取消訴訟しかしません。そもそも、開発許可の場合は、行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号。以下「行訴法」という。)第8条第1項ただし書に該当しないので、審査請求なんてしなくても、いきなり、取消訴訟ができますし、行訴法第10条第2項の規定により裁決の取消訴訟をしたところで、本来、主張すべき、元々の処分の違法を主張できないからです。

というのも、仮にですよ、開発許可申請の不許可処分の取消訴訟をA裁判官が担当して、裁決の取消訴訟をB裁判官が担当したときに、A裁判官は処分の違法を認めなかったけど、B裁判官は処分の違法を認めたとすれば、判決が矛盾して裁判所ダメじゃん…というようなことになりますよね。

だから、そうならないよう、行訴法第10条第2項のような決まりがあって、この決まりを講学上、原処分主義と言います。

とすれば、②と③の答えは分かりますね。

②が処分の違法以外の主張=裁決固有の瑕疵についての主張で、③が原処分主義です。

①は、これまで何度も出てきましたが、行訴法第11条第1項第2号の規定によりY県です。(開発審査会は、建築主事のいる自治体に置かれているので(建築基準法(昭和25年法律第201号)第78条第1項参照)、本問の開発審査会は、Y県に置かれています。)問題に参照条文(建築基準法第78条)を付けておいてほしいですけど、「開発審査会ぐらい知っとけよ。」ということなんでしょうね。

(ということで40字にまとめます。)
①被告はY県で、②裁決固有の瑕疵の主張のみが許され、③こうした原則を原処分主義という。(40字)

○行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)
(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)
第八条 処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。
2 前項ただし書の場合においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。
一 審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないとき。
二 処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。
三 その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。
3 略
(取消しの理由の制限)
第十条 取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない。
2 処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない。(被告適格等)
第十一条 処分又は裁決をした行政庁(処分又は裁決があつた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁。以下同じ。)が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者を被告として提起しなければならない。
一 処分の取消しの訴え 当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体
二 裁決の取消しの訴え 当該裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体
2~6 略
○建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)
(建築審査会)
第七十八条 この法律に規定する同意及び第九十四条第一項前段の審査請求に対する裁決についての議決を行わせるとともに、特定行政庁の諮問に応じて、この法律の施行に関する重要事項を調査審議させるために、建築主事を置く市町村及び都道府県に、建築審査会を置く
2 建築審査会は、前項に規定する事務を行う外、この法律の施行に関する事項について、関係行政機関に対し建議することができる。

2 平成27年度(問題45)条文型

(問題文)
権原の性質上、占有者に所有の意思のない他主占有が、自主占有に変わる場合として2つの場合がある。民法の規定によると、①ひとつは、他主占有者が自己に占有させた者に対して所有の意思があることを表示した場合である。②もうひとつはどのような場合か、40字程度で記述しなさい。

※ 丸数字、赤字は、理解を助けるためにまるやが付したものです。

(当時の正解例)
他主占有者が新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めた場合。(34字)

(まるや解説:標準)
民法(明治29年法律第89号)第185条の問題です。
相続と新権原という有名な判例はあるのですが、ここでは、条文の文言のみで、解答することが可能です。同条には、次の2つの場合があり、①の場合は問題文に示されて、「もうひとつはどのような場合ですか」と問われているので、書かれていない方の②を答えます。
①占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示する場合
②占有者が、新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始める場合

(②を転記します。)
他主占有者が、新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始める場合(34字)
・条文どおり「占有を始める」としています。
・体言止めに句点は不要です。(「とき」、「こと」は例外)

○民法(明治二十九年法律第八十九号)
(占有の性質の変更)
第百八十五条 権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。

(さらに先へ。冒頭で述べた判例の御紹介)
「~相続人が、被相続人の死亡により、相続財産の占有を承継したばかりでなく、新たに相続財産を事実上支配することによつて占有を開始し、その占有に所有の意思があるとみられる場合においては、被相続人の占有が所有の意思のないものであつたときでも、相続人は民法一八五条にいう「新権原」により所有の意思をもつて占有を始めたものというべきである。」

3 平成27年度(問題46)条文型

(問題文)
AとBは婚姻し、3年後にBが懐胎したが、その頃から両者は不仲となり別居状態となり、その後にCが出生した。Bは、AにCの出生を知らせるとともに、Aとの婚姻関係を解消したいこと、Cの親権者にはBがなること、およびAはCの養育費としてBに対し毎月20万円を支払うことを求め、Aもこれを了承して協議離婚が成立した。ところが離婚後、Aは、Bが別居を始める前から他の男性と交際していたことを知り、Cが自分の子であることに疑いを持った。
このような事情において、Cが自分の子でないことを確認するため、Aは①誰を相手として、②いつまでに、③どのような手続をとるべきか。民法の規定および判例に照らし、とるべき法的手段の内容を40字程度で記述しなさい。

※ 丸数字、赤字は、理解を助けるためにまるやが付したものです。

(当時の正解例)
Aは①C又はBを被告として、②Cの出生を知った時から1年以内に、③嫡出否認の訴えを提起すべき。(44字)

(まるや解説:ダメダメ)
このような事情において、Cが自分の子でないことを【確認】するため、っつたら、「やっぱ、DNA鑑定じゃね。」と思って、次のような解答をすると、当然、零点です。

(これは零点です。)
AとCの親子関係を確認するため、BにCのDNA鑑定をさせ、その結果をAに報告させる。(42字)

(まるや解説:標準)
冗談はさておき、問題文には、「Cが自分の子でないことを確認するため、」とありますが、Aの内心は、「どうせ、俺の子じゃねえんだろう!白黒付けさせろや!」ということなので、この問題では、民法第775条の嫡出否認の訴えが訊かれているのです。

要は、問題文を「Cが自分の子でないことを法的に明らかにするため、Aは、①誰を相手として、②いつまでに、③どのような手続をとるべきか。」のように読み替えて解かないと駄目なわけです。

確認訴訟が頭にあって確認と書いてしまったんでしょうが、それなら「Cが自分の子でないことを法的に明らかにするため、Aは、①誰を相手として、②いつまでに、③どういう名称の確認訴訟をするべきか。」とか書けよと、全く、いつもながら国語の勉強からやり直せと、小一時間…)

(関係条文からは、こんなもの)
Aは、①C又はBを相手として、②Cの出生を知った時から1年以内に、③嫡出否認の訴えを提起すべき。(45字)
・問題文に「相手として」とあるので、解答も「相手として」としました。

○民法(明治二十九年法律第八十九号)
(嫡出の推定)
第七百七十二条 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する
2 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
(嫡出の否認)
第七百七十四条 第七百七十二条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる
(嫡出否認の訴え)
第七百七十五条 前条の規定による否認権は、子又は親権を行う母に対する嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。
(嫡出否認の訴えの出訴期間)
第七百七十七条 嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない。

(別に知らなくていいけれど)
1年過ぎてしまうと、の可哀そうな判例です。
一応、嫡出否認の期間を過ぎてしまっても、親子関係不存在確認という手段は、残されているのですが、自然的血縁関係はないと認定されているのも関わらず、何故か当該手段でも負けてしまった男が延々と監護費用を毟られていたという案件です。

最高裁の判決により、お金は払わなくてもよくなったようですが、法的な親子関係は、継続しているようです。自然的血縁関係がないと分かっていて、どうして親子関係不存在確認の訴えが却下されたかは謎ですねえ…

  主文
1 原判決中,二男Aの監護費用の分担に関する部分を破棄し,同部分につき第1審判決を取り消す。
2 前項の部分に関する被上告人の申立てを却下する。
3 原判決中,長男B及び三男Cの監護費用の分担に関する部分につき,本件上告を却下する。
4 その余の本件上告を棄却する。
5 訴訟の総費用はこれを20分し,その17を上告人の負担とし,その余を被上告人の負担とする。
  理由
上告代理人伊豆隆義,同阿部泰彦の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
1 本件は,上告人が,本訴として,被上告人に対し,離婚等を請求するなどし,被上告人が,反訴として,上告人に対し,離婚等を請求するとともに,長男,二男及び三男の養育費として,判決確定の日の翌日から,長男,二男及び三男がそれぞれ成年に達する日の属する月まで,1人当たり月額20万円の支払を求める旨の監護費用の分担の申立てなどをする事案である。上告人は,二男との間には自然的血縁関係がないから,上告人には監護費用を分担する義務はないなどと主張している。
2 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 上告人(昭和37年▲月▲日生)と被上告人(昭和36年▲月▲日生)と
は,平成3年▲月▲日に婚姻の届出をした夫婦である。被上告人は,平成8年▲月▲日に上告人の子である長男Bを,平成11年▲月▲日に上告人の子である三男Cをそれぞれ出産したが,その間の平成9年▲月▲日ころ上告人以外の男性と性的関係を持ち,平成10年▲月▲日に二男Aを出産した。二男と上告人との間には,自然的血縁関係がなく,被上告人は,遅くとも同年▲月ころまでにそのことを知ったが,それを上告人に告げなかった。
(2) 上告人は,平成9年ころから,被上告人に通帳やキャッシュカードを預け,その口座から生活費を支出することを許容しており,平成11年ころ,一定額の生活費を被上告人に交付するようになった後も,被上告人の要求に応じて,平成12年1月ころから平成15年末まで,ほぼ毎月150万円程度の生活費を被上告人に交付してきた。
(3) 上告人と被上告人との婚姻関係は,上告人が被上告人以外の女性と性的関係を持ったことなどから,平成16年1月末ころ破綻した。その後,上告人に対して,被上告人に婚姻費用として月額55万円を支払うよう命ずる審判がされ,同審判は確定した。
(4) 上告人は,平成17年4月に初めて,二男との間には自然的血縁関係がないことを知った。上告人は,同年7月,二男との間の親子関係不存在確認の訴え等を提起したが,同訴えを却下する判決が言い渡され,同判決は確定した。
(5) 上告人が被上告人に分与すべき積極財産は,合計約1270万円相当である。
3 原審は,上告人と被上告人とを離婚し,長男,二男及び三男の親権者をいずれも被上告人と定めるべきものとするなどした上,二男の監護費用につき,次のとおり判断した。
上告人と二男との間に法律上の親子関係がある以上,上告人はその監護費用を分担する義務を負い,その分担額については,長男及び三男と同額である月額14万円と定めるのが相当である。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 前記事実関係によれば,被上告人は,上告人と婚姻関係にあったにもかかわらず,上告人以外の男性と性的関係を持ち,その結果,二男を出産したというのである。しかも,被上告人は,それから約2か月以内に二男と上告人との間に自然的血縁関係がないことを知ったにもかかわらず,そのことを上告人に告げず,上告人がこれを知ったのは二男の出産から約7年後のことであった。そのため,上告人は,二男につき,民法777条所定の出訴期間内に嫡出否認の訴えを提起することができず,そのことを知った後に提起した親子関係不存在確認の訴えは却下され,もはや上告人が二男との親子関係を否定する法的手段は残されていない。
他方,上告人は,被上告人に通帳等を預けてその口座から生活費を支出することを許容し,その後も,婚姻関係が破綻する前の約4年間,被上告人に対し月額150万円程度の相当に高額な生活費を交付することにより,二男を含む家族の生活費を負担しており,婚姻関係破綻後においても,上告人に対して,月額55万円を被上告人に支払うよう命ずる審判が確定している。このように,上告人はこれまでに二男の養育・監護のための費用を十分に分担してきており,上告人が二男との親子関係を否定することができなくなった上記の経緯に照らせば,上告人に離婚後も二男の監護費用を分担させることは,過大な負担を課するものというべきである。
さらに,被上告人は上告人との離婚に伴い,相当多額の財産分与を受けることになるのであって,離婚後の二男の監護費用を専ら被上告人において分担することができないような事情はうかがわれない。そうすると,上記の監護費用を専ら被上告人に分担させたとしても,子の福祉に反するとはいえない。
(2) 以上の事情を総合考慮すると,被上告人が上告人に対し離婚後の二男の監護費用の分担を求めることは,監護費用の分担につき判断するに当たっては子の福祉に十分配慮すべきであることを考慮してもなお,権利の濫用に当たるというべきである。これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由がある。
5 以上によれば,原判決中,二男の監護費用の分担に関する部分は破棄を免れず,第1審判決中,同部分を取り消して,同部分に関する被上告人の申立てを却下すべきである。
なお,長男及び三男の監護費用の分担に関する上告については,上告人は上告受理申立て理由を記載した書面を提出しないので,これを却下することとし,その余の上告については,上告受理申立て理由が上告受理決定において排除されたので,これを棄却することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
( 裁判長裁判官 竹内行夫 裁判官 古田佑紀 裁判官 須藤正彦 裁判官 千葉勝美)

それでは、本日は、この辺りとさせていただきます。
今後とも、家内安全を第一に、無理のない範囲でお取組ください。

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