行政書士試験記述式過去問分析(平成24年度)

行政書士

(本日のコンテンツ)
1 平成24年度(問題44)概念型・条文型
2 平成24年度(問題45)条文型
3 平成24年度(問題46)条文型

皆様、おはようございます。
第3問の遺留分の制度は、今も重要なので、現行の制度として覚えてください。

1 平成21年度(問題44)条文型

(問題文)
Xは、A県B市内に土地を所有していたが、B市による市道の拡張工事のために、当該土地の買収の打診を受けた。Xは、土地を手放すこと自体には異議がなかったものの、B市から提示された買収価格に不満があったため、買収に応じなかった。ところが、B市の申請を受けたA県収用委員会は、当該土地について土地収用法48条に基づく収用裁決(権利取得裁決)をした。しかし、Xは、この裁決において決定された損失補償の額についても、低額にすぎるとして、不服である。より高額な補償を求めるためには、Xは、①だれを被告として、②どのような訴訟を提起すべきか。また、このような訴訟を行政法学において③何と呼ぶか。40字程度で記述しなさい。

※ 丸数字、赤字などは、理解を助けるためにまるやが付したものです。

(当時の正解例)
①B市を被告として、②損失補償の増額請求の訴えを提起すべきで、③形式的当事者訴訟と呼ぶ。(41字)

(まるや解説:標準)

  • Xは、土地を手放すこと自体には異議がなかった。
  • この裁決において決定された損失補償の額についても、低額にすぎるとして、不服である。
  • より高額な補償を求めるため
    とあるので、要は、「もっと金くれや、ゴルア!」ということなのでしょう。

この問題には、土地収用法の参照条文も付いていないし、「こういう場合は、形式的当事者訴訟(行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)第4条)で起業者(土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第133条第3項)を訴える」と覚えていなければ、ちょっと解けません…(--;

で、覚えていれば、起業者は、B市なので、次のように解答を作成します。
なお、当事者訴訟には、本問のような形式的当事者訴訟と、実質的当事者訴訟(国家公務員の俸給支払請求訴訟等)がありますので、この機に、御自身のテキストで確認しておいてください。(手元の合格革命を確認しました。過去問があるからかもしれませんが、そのものズバリを書いていますね。)

(覚えていなければ無理)
①B市を被告として、②損失の補償に関する訴えを提起すべきで、③この訴えを形式的当事者訴訟と呼ぶ。(45字)
※ 土地収用法第133条第2項の文言どおり「損失の補償に関する訴え」としました。減額の訴えなんてする奴いないし…
※ 「訴え」と「呼ぶ」の間が遠いので、「この訴えを」を補いました。

(まるや解説:無駄)
Xさんは、土地の代金で文句を言っているようですが、「土地の代金のみ」であれば、B市に誤りがない限り、土地の代金は、路線価又は売買実例(これが使われるときは、通常、路線価よりも高い。)に基づく単価を土地の形状等で補正するだけなので、まず増額はあり得ません。

一方、土地を明け渡すに当たっての物件除却等の補償額であれば、ほぼ全ての起業者が説明さえ付けば、ギリギリまで支払ってくれます。

故に、あなたが、もし、B市から打診を受けたら、「事情通」に相談し、適切に対応してください。補償額は、グッと上昇するでしょう。

○行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)
(当事者訴訟)
第四条 この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう
○土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)
(権利取得裁決)
第四十八条 権利取得裁決においては、次に掲げる事項について裁決しなければならない。
一 収用する土地の区域又は使用する土地の区域並びに使用の方法及び期間
二 土地又は土地に関する所有権以外の権利に対する損失の補償
三 権利を取得し、又は消滅させる時期(以下「権利取得の時期」という。)
四 その他この法律に規定する事項
2 収用委員会は、前項第一号に掲げる事項については、第四十条第一項の規定による裁決申請書の添附書類によつて起業者が申し立てた範囲内で、且つ、事業に必要な限度において裁決しなければならない。但し、第七十六条第一項又は第八十一条第一項の規定による請求があつた場合においては、その請求の範囲内において裁決することができる。
3 収用委員会は、第一項第二号に掲げる事項については、第四十条第一項の規定による裁決申請書の添附書類並びに第四十三条、第六十三条第二項若しくは第八十七条ただし書の規定による意見書又は第六十五条第一項第一号の規定に基いて提出された意見書によつて起業者、土地所有者、関係人及び準関係人が申し立てた範囲をこえて裁決してはならない。
4 収用委員会は、第一項第二号に掲げる事項については、前項の規定によるのほか、当該補償金を受けるべき土地所有者及び関係人の氏名及び住所を明らかにして裁決しなければならない。ただし、土地所有者又は関係人の氏名又は住所を確知することができないときは、当該事項については、この限りでない。
5 収用委員会は、第一項第二号に掲げる事項については、前二項の規定によるのほか、土地に関する所有権以外の権利に関して争いがある場合において、裁決の時期までにその権利の存否が確定しないときは、当該権利が存するものとして裁決しなければならない。この場合においては、裁決の後に土地に関する所有権以外の権利が存しないことが確定した場合における土地所有者の受けるべき補償金をあわせて裁決しなければならない。(訴訟)
第百三十三条 収用委員会の裁決に関する訴え(次項及び第三項に規定する損失の補償に関する訴えを除く。)は、裁決書の正本の送達を受けた日から三月の不変期間内に提起しなければならない。
2 収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する訴えは、裁決書の正本の送達を受けた日から六月以内に提起しなければならない。
3 、前項の規定による訴えはこれを提起した者が起業者であるときは土地所有者又は関係人を、土地所有者又は関係人であるときは起業者を、それぞれ被告としなければならない

2 平成21年度(問題44)条文型

(問題文)
AがBに金銭を貸し付けるにあたり、書面により、Cが保証人(Bと連帯して債務を負担する連帯保証人ではない。)となり、また、Dが物上保証人としてD所有の土地に抵当権を設定しその旨の登記がなされた。弁済期を徒過したので、Aは、Bに弁済を求めたところ、Bは、「CまたはDに対して請求して欲しい」と応えて弁済を渋った。そこで、Aは、Dに対しては何らの請求や担保権実行手続をとることなく、Cに対してのみ弁済を請求した。この場合において、Cは、Aの請求に対し、どのようなことを証明すれば弁済を拒むことができるか。40字程度で記述しなさい。

※ 赤字は、理解を助けるためにまるやが付したものです。

(当時の正解例)
Bに弁済する資力があり、かつ、その執行が容易であることを証明した場合、拒むことができる。(44字)

(まるや解説:標準)
連帯保証人ではない保証人には、催告の抗弁(民法第452条)と検索の抗弁(民法第453条)があります。本問では、債権者Aが主債務者Bに弁済を求めた(催告はした)後の話なので、検索の抗弁(民法第453条)を解答することになります。

(登場人物などを当てはめます。)
債権者(A)が主たる債務者(B)に催告をした後であっても、保証人(C)が主たる債務者(B)に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者(A)は、まず主たる債務者(B)の財産について執行をしなければならない。

(枝葉を取ります。)
AがBに催告をした後であっても、CがBに弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、Aは、まずBの財産について執行をしなければならない。

(問いは、どのようなことを証明すればなので)
Bに弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明すれば、弁済を拒むことができる。(45字)
・問い(証明すれば弁済を拒むことができる)に合わて括りました。

○民法(明治二十九年法律第八十九号)
(検索の抗弁)
第四百五十三条 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない

3 平成21年度(問題44)条文型

(問題文)
次の文章は遺言に関する相談者と回答者の会話である。[   ]の中に、どのような請求によって、何について遺言を失効させるかを40字程度で記述しなさい。
相談者
「今日は遺言の相談に参りました。私は夫に先立たれて独りで生活しています。亡くなった夫との間には息子が一人おりますが、随分前に家を出て一切交流もありません。私には、少々の預金と夫が遺してくれた土地建物がありますが、少しでも世の中のお役に立てるよう、私が死んだらこれらの財産一切を慈善団体Aに寄付したいと思っております。このような遺言をすることはできますか。」
回答者
「もちろん、そのような遺言をすることはできます。ただ「財産一切を慈善団体Aに寄付する」という内容が、必ずしもそのとおりになるとは限りません。というのも、相続人である息子さんは、[   ]からです。そのようにできるのは、被相続人の財産処分の自由を保障しつつも、相続人の生活の安定及び財産の公平分配をはかるためです。」

※ 赤字は、理解を助けるためにまるやが付したものです。

(当時の正解例)
遺留分減殺請求により、被相続人の財産の2分の1の限度で、遺言を失効させることができる(42字)

(まるや解説:標準)
大原の問題集では、法改正により不成立と書いていますが、遺留分の制度自体がなくなったわけではありません。(民法第1042条参照)

なので、本問であれば、息子さんには、「遺留分を算定するための財産の価額」に、二分の一を乗じて得た額が、遺留分として残されることになります。

○民法(明治二十九年法律第八十九号)
(遺留分の帰属及びその割合)
第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
2 略

なお、ここでの制度改正の内容を非常に簡単に書くと、遺留分については、遺留分侵害額に相当する金銭請求ができるだけになりました。(=「遺留分の額に満つるまで、お金だけはもらえるよ。」ということで、遺留分減殺請求による土地の共有持分なんてものは発生しなくなった。)

そして、この遺留分の侵害を受けた場合、遺留分侵害額の請求をすることができるので、現在であれば、解答は、次のようになります。

(今ならこんな感じ)
遺留分侵害額として、被相続人の財産の2分の1までの金銭の支払いを請求することができる(42字)

2022年06月12日 2012年04月01日
○民法(明治二十九年法律第八十九号)
(遺留分侵害額の請求)
第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
2 遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。
一 遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額
二 第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
三 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額
○民法(明治二十九年法律第八十九号)
第千三十条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
(遺贈又は贈与の減殺請求)
第千三十一条 遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる

それでは、本日は、この辺りとさせていただきます。
今後とも、家内安全を第一に、無理のない範囲でお取組ください。

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