行政書士試験記述式過去問分析(平成23年度)

行政書士

(本日のコンテンツ)
1 平成23年度(問題44)概念型
2 平成23年度(問題45)条文型
3 平成23年度(問題46)条文型

皆様、おはようございます。
何と、この年度は、第三問目に遂に、ぷちダメ問題が登場です。本当にこれが当時の解答例であったとしたらではありますが…

1 平成23年度(問題44)条文型

(問題文)
以下に引用する消防法29条1項による消防吏員・消防団員の活動(「破壊消防」と呼ばれることがある)は、行政法学上のある行為形式(行為類型)に属するものと解されている。その行為形式は、①どのような名称で呼ばれ、②どのような内容のものと説明されているか。40字程度で記述しなさい。

消防法29条1項
消防吏員又は消防団員は、消火若しくは延焼の防止又は人命の救助のために必要があるときは、火災が発生せんとし、又は発生した消防対象物及びこれらのものの在る土地を使用し、処分し又はその使用を制限することができる。

※ 丸数字及び赤字などは、理解を助けるため、まるやが付したものです。

(当時の正解例)
①即時強制と呼ばれ、②義務の不履行を前提とせずに、国民の身体や財産に直接実力を行使するもの。(44字)

お手元のテキストを見てもらえればいいのですが、次のような分類を思い出してください。概念型なので、当時の正解例でもいいのですが、御自分のテキストどおりにしておいてください。

行政強制-行政上の強制執行(①代執行、②執行罰、③直接強制、④行政上の強制徴収)
-即時強制

即時強制(コトバンク)
(即時強制の例)

  • 警察官職務執行法の定める質問・保護・避難などの措置、犯罪の予防および制止、立入り、武器の使用
  • 健康診断や予防接種の強制
  • 風俗営業などの営業所などへの立入検査
  • 食品衛生法における見本品の無償収去
  • 火災の際の土地の使用など

本問は、火災の際の土地の使用などですから、即時強制に当たります。

2 平成23年度(問題45)条文型

(問題文)
Aの抵当権(登記済み)が存する甲土地をその所有者Bから買い受け、甲土地の所有権移転登記を済ませたCは、同抵当権を消滅させたいと思っている。抵当権が消滅する場合としては、被担保債権または抵当権の消滅時効のほかに、Cが、Bの債権者である抵当権者Aに対し被担保債権額の全部をBのために弁済することが考えられるが、そのほかに、抵当権が消滅する場合を二つ(①②)、40字程度で記述しなさい。

(当時の正解例)
①CがAに対して抵当権消滅請求をした場合及び②CがAの請求に応じて甲土地の代価を弁済した場合。(45字)

※ 丸数字及び赤字などは、理解を助けるため、まるやが付したものです。

(まるや解説:標準)
平成28年度の第二問のように大混乱はないと思いますが、本問のようなケースであれば、抵当不動産を購入したCからのアクションを考えてしまいますので、民法第379条(抵当権消滅請求)は直ぐに思い付くものの、Aからのアクションである第378条(代価弁済)は、中々、出てこないかもしれません。

その場合は、とにかく一点でも多く取るために、民法第379条(抵当権消滅請求)だけでもしっかり書くしかないのですが、本問では、消滅時効や弁済のほかに「抵当権が消滅する場合」は何ですか?と訊かれているので、消滅する場合、場合と考えて、「売買しかダメなやつね」とか思い出すことができれば、そこを掘っていきましょう。こんな感じです

  • 第三者の弁済(§474)使えない。
  • 抵当権消滅請求(§379)あるよね。
  • 代価弁済(§378)これだ!

登場人物なんかを条文に当てはめると次のようになりますから、これをまとめます。
①抵当不動産(甲土地)について所有権又は地上権を買い受けた第三者(C)が、抵当権者(A)の請求に応じてその抵当権者(A)にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者(C)のために消滅する。
②抵当不動産(甲土地)の第三取得者(C)は、第三百八十三条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。
抵当不動産(甲土地)の第三取得者(C)は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者(A)に対し、次に掲げる書面を送付しなければならない。

(40字程度にまとめます。)
①CがAの請求に応じ甲土地の代価を弁済した場合及び②CのAに対する抵当権消滅請求が功奏した場合(45字)

  • 条文番号順にしていますが、当時の解答例(発想順:Cからのアクション→Aからのアクション)で特に問題はありません。
  • 抵当権が消滅する場合なので、正確には、抵当権消滅請求が功を奏する場合です。
  • この抵当権消滅請求に対しては、抵当権者の対抗策として2箇月以内の競売というものがありますので、この機に知っておいてください。
  • しかし、社会的実態としては、甲土地を事業に使うのであれば、99%(比喩的な割合ですよ。)、Cは、あらかじめ、Bに対し、抵当権を解除することができる金員を交付し、Aに対する債務を解消させ、抵当権を抹消させます。(抵当権消滅請求なんて時点で土地転がしの可能性大ですね。)
  • そうして、Cは、抵当権のない綺麗な(比喩的な表現ですよ。)甲土地の所有権移転登記を済ませます。
  • この場合、BのAに対する債務額が甲土地の価格よりも高かったりすると、Bは、Cにお金を返すのが筋ですが、甲土地が事業上、必要であればあるほど、まあ、交渉なんでしょうね。(時価よりも多少はが付くものです。)
○民法(明治二十九年法律第八十九号)
(代価弁済)
第三百七十八条 抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。
(抵当権消滅請求)
第三百七十九条 抵当不動産の第三取得者は、第三百八十三条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。
(抵当権消滅請求の手続)
第三百八十三条 抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対し、次に掲げる書面を送付しなければならない。
一 取得の原因及び年月日、譲渡人及び取得者の氏名及び住所並びに抵当不動産の性質、所在及び代価その他取得者の負担を記載した書面
二 抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る。)
三 債権者が二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、抵当不動産の第三取得者が第一号に規定する代価又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し又は供託すべき旨を記載した書面

3 平成23年度(問題46)条文型

(問題文)
作家Yに雇用されている秘書Aは、Y名義で5万円以下のYの日用品を購入する権限しか付与されていなかったが、Yに無断でXからYのために50万円相当の事務機器を購入した。しかし、Xは、Aに事務機器を購入する権限があるものと信じて取引をし、Yに代金の支払いを請求したところ、Yはその支払いを拒絶した。このようなYの支払い拒絶を不当と考えたXは、Yに対して、支払いの請求、およびそれに代わる請求について検討した。この場合において、Xは、①どのような根拠に基づき、②いかなる請求をすればよいか。「Xは、Yに対して、」に続けて、考えられる請求内容を二つ(①②)、40字程度で記述しなさい。

Xは、Yに対して、

(当時の正解例)
①権限外の表見代理に基づき②代金支払いの請求をするか、①使用者責任に基づき②損害賠償請求をする。(44字)

(まるや解説:標準)
本問は、正直、表見代理しかできなくても仕方がないと思います。
作問者の意図は、
「Yに無断でXからYのために50万円相当の事務機器を購入した。」
「Xは、Aに事務機器を購入する権限があるものと信じて取引をした。」
との事情の下で、支払いの請求(表見代理)、およびそれに代わる請求(「作問者の意図」は、使用者責任)を書いてね。というものです。

問題文に「およびそれに代わる請求」ではなくて「仮に、支払いの請求が認められない場合、何らかの請求ができないか」ぐらいに書いておいてくれれば、「何かひねり出して」と思って、XになったつもりでYに文句を言ってみることで分かったかもしれません。

「あんたんとこの従業員がやったことなんだから、あんたが責任を取れよ!」

ここまで思い付けば、「雇い主として責任を取れ!」=使用者責任に思い至って、当時の正解例のようなものを書くことになります。

(まるや解説:諦念)
というものの、解答として挙げられている使用者責任(民法第715条)は、民法第5章(不法行為)に位置付けられており、実務では、今回のようなケースを不法行為として処理することは、まずないというか、5ちゃんねる的には「ハァ?」の世界なんですよ。

だって、取引を白紙にしたとしても、Xには、新品(同然)の事務機器が戻ってくるわけですから、事務機器の代金50万円全額が損害額とはいえず、現実の損害を計算したところで、事務機器の輸送費や手配に係る手間賃、一旦、販売してしまったことによる事務機器の減損額などの和にしかなりなせんから、こんなちまちましたことに時間は割きません。(不法行為の場合は、損害の挙証責任は、被害者側にあって、これが一番面倒)

それに、この秘書さんがやったことって、争うほどの不法行為なんですかね?細かい事情が不明で、何とも言えませんが、「先生、いい加減、パソコン買ってくださいよ。」とか、「コピー機買ってくださいよ。」ぐらいのことじゃないんでしょうか?

まあ、その程度のことだろうから、実際は、表見代理を主張して、多くの会社で使っている標準契約書に沿って違約金1割(本件であれば、5万円)取って終わりでしょうが、5万円でも作家Yがゴネルようなら、普通は、損切りでしょうねえ…

「6年目にして、とうとう出たかあ!」のぷちダメ問題でした。

○民法(明治二十九年法律第八十九号)
(代理権授与の表示による表見代理等)
第百九条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
2 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。
(権限外の行為の表見代理)
第百十条 前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

それでは、本日は、この辺りとさせていただきます。
今後とも、家内安全を第一に、無理のない範囲でお取組ください。

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