行政書士試験記述式過去問分析(平成19年度)

行政書士

(本日のコンテンツ)
1 平成19年度(問題44)条文型
2 平成19年度(問題45)条文型
3 平成19年度(問題46)条文型

皆様、おはようございます。
今回も全て条文型で、ちょっと細かい知識を訊いている気はしますが、記述式も滑り出しは、平凡な?感じですね。

1 平成19年度(問題44)条文型

(問題文)
Xは、A県内においてパチンコ屋の営業を計画し、A県公安委員会に風俗営業適正化法に基づく許可を申請した。しかし、この申請書には、内閣府令に定める必要な記載事項の一部が記載されていなかった。この場合、行政手続法7条によれば、A県公安委員会には、その申請への対応として、どのような選択が認められているか。40字程度で記述しなさい。

※ 赤字などは、理解を助けるため、まるやが付したものです。

(当時の正解例)
速やかに、相当の期間を定めて補正を求め、または申請された許可を拒否しなければならない。(43字)

(まるや解説:標準)
いわゆる補正命令の関係です。
皆様が行政書士になった後で、行政庁の担当者から、申請に不備があるとして電話があったときは、直ちに対応してください。許認可の種類にもよりますが、法的には、全く不備がないような場合であっても「こうしてくれ。」だの「ああしてくれ。」だのは、絶対にあります。

「法的に理由のない行政指導に従う理由はありません。」と突っ張ねれば、気分はいいでしょうが、困るのはお客様です。開業後は、必ず、理不尽な?補正指導(行政指導)があると思いますが、お客様のため、ひいては自分のために直ちに対応してください。

はさておき、問題を解かなくてはならないので、問題文中にもある行政手続法(平成5年法律第88号)第7条に本問を当てはめます。

(登場人物等を当てはめます。)
行政庁は、法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請(内閣府令に定める必要な記載事項の一部が記載されていない申請=本問の申請)については、速やかに、申請をした者(以下「申請者」という。=X)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。

(枝葉を落とします。)
行政庁は、本問の申請については、速やかに、Xに対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。

(対応としての選択を書くよう求められていますので)
速やかに、Xに対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。(60字)

(字数オーバーなので、端折ります。)
速やかに、Xに対し相当の期間を定めて補正を求め、又は許可申請を拒否しなければならない。(43字)

○行政手続法(平成五年法律第八十八号)
(申請に対する審査、応答)
第七条 行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない

2 平成19年度(問題45)条文型

(問題文)
Aは、飼っている大型のドーベルマンを、鎖を外したまま連れて散歩に出ていたが、この犬が歩行者Bを見かけて走って行き、襲いかかってしまった。そこで、あわててBは近くのC宅敷地に飛び込み、自転車や植木鉢を壊してしまった。この場合、Cに対する損害賠償責任をBが負わないためには、どのような要件を満たす必要があるか。40字程度で記述しなさい。

※ 赤字は、理解を助けるため、まるやが付したものです。

(当時の正解例)
【例1】BがAの不法行為から自己の身体を防衛するため、やむを得ずCの財産を毀損したこと。(40字)
【例2】他人の不法行為から自己の権利を守るためにやむを得ない行為であったこと。(35字)

(まるや解説:標準)
民法上の正当防衛の関係です。愛犬家の人は、怒るでしょうが、民法上、犬は「物」です。まるやは、子供の頃、近所の犬の頭を撫でようとして、そのまま嚙まれて以降、犬が苦手なので、怒りませんが…(--;

なお、今回は、民法第720条第1項の問題ですが、この機に併せて確認することができるよう、同条第2項(緊急避難:物から生じる危難が対象。本件であれば、愛用のマグナムでドーベルマンを撃ち殺したときは、同項の対象ですが、、、銃刀法違反で逮捕されますね。)は略していません。

さて、本件は、Aが飼犬を抑えられず、Bに襲い掛からせてしまったのが不法行為なので、民法第720条第1項に当てはめてみます。

(登場人物等を当てはめます。)
他人(A)の不法行為(Aが飼犬を抑えられず、Bに襲い掛からせてしまったこと)に対し、自己(B)又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為(自転車や植木鉢を壊したこと)をした者(B)は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者(C)から不法行為をした者(A)に対する損害賠償の請求を妨げない。

(枝葉を落とします。)
Aの不法行為に対し、自己の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず自転車や植木鉢を壊したBは、損害賠償の責任を負わない。

(訊かれているのは要件なので)
BがAの不法行為から自己の身体を防衛するため、やむを得ずCの自転車等を壊したことが要件(43字)
・問いの形が「どのような要件を満たす必要があるか。」なので、「~の要件を満たす必要がある。」と書きたいところですが、字数をオーバーするので、訊かれているのは要件であるとして、最後を「要件」で括りました。

○民法(明治二十九年法律第八十九号)
(正当防衛及び緊急避難)
第七百二十条 他人の不法行為に対し自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。
2 前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。

3 平成19年度(問題44)条文型

(問題文)
金銭債務の不履行については、履行不能や不完全履行の観念を入れる余地はなく履行遅滞のみが問題となると考えられているところ、民法は、「金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。」と規定している(419条1項)。それでは、この点のほか金銭債務の特則二つを、「金銭債務の不履行の損害賠償については、」に続けて、40字程度で記述しなさい
なお、「金銭債務の不履行の損害賠償については、」は、字数に算入しない。

金銭債務の不履行の損害賠償については、

※ 赤字などは、理解を助けるため、まるやが付したものです。

(当時の正解例)
【例1】債権者は、損害の証明をする必要がなく、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。(45字)
【例2】債権者は、損害の立証は不要であり、債務者は、無過失でも責任を負う。(33字)

対象条文に改正(令和2年4月1日施行)があるので、一応、新旧対照表を付けておきますが、この改正は、法定利率(民法第404条)が変動制になったことに伴い、民法第419条第1項の法定利率の時点を定めたものです。

(金銭債務の特則)
第四百十九条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
(金銭債務の特則)
第四百十九条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない
3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない

問題は、民法第419条の第2項と第3項を覚えていますか?というもので、

(文言をそのまま書くと)
①債権者は、損害の証明をすることを要しない。
②債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
となります。

(①②をまとめます。)
債権者は損害の証明をすることを要せず、債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができない。(44字)

なお、対句表現の際は、句点は付けてはいけません。(今回であれば、「債権者は」と「債務者は」の後の句点)解答を短くすることができるので、覚えておきましょう。

それでは、本日は、この辺りとさせていただきます。
今後とも、家内安全を第一に、無理のない範囲でお取組ください。

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