行政書士試験記述式過去問分析(令和元年度)

行政書士

(本日のコンテンツ)
1 令和元年度(問題44)条文型
2 令和元年度(問題45)条文型
3 令和元年度(問題46)条文型

皆様、おはようございます。

今回は、全て条文型で、特に申し上げることはありませんが、問題46において、「どのようなことをする必要があるか」と問いながら、問題文にある具体的事実(代金50万円を受け取る意思)ではなく、条文の文言そのもの(契約の利益を享受する意思)を引くのがセンター解答というところは、ちょっと気味が悪いところです。

おそらく具体的事実を書いても減点はされないと思うのですが、(というか、「どのようなこと」と「こと」を問いながら、条文の文言どおりが減点されない方が大甘だと思いますが…)仮に減点されるとすれば、問題文に具体的事実が示されていても、当てはめはしてはならないという、行政書士試験記述式のトンデモお作法になるのでしょう。

1 令和元年度(問題44)条文型

(問題文)
A所有の雑居ビルは、消防法上の防火対象物であるが、非常口が設けられていないなど、消防法等の法令で定められた防火施設に不備があり、危険な状態にある。しかし、その地域を管轄する消防署の署長Yは、Aに対して改善するよう行政指導を繰り返すのみで、消防法5条1項所定の必要な措置をなすべき旨の命令(「命令」という。)をすることなく、放置している。こうした場合、行政手続法によれば、Yに対して、①どのような者が、②どのような行動をとることができるか。また、これに対して、Yは、③どのような対応をとるべきこととされているか。40 字程度で記述しなさい。
(参照条文)
消防法
第5条第1項 消防長又は消防署長は、防火対象物の位置、構造、設備又は管理の状況について、火災の予防に危険であると認める場合、消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める場合、火災が発生したならば人命に危険であると認める場合その他火災の予防上必要があると認める場合には、権限を有する関係者(略)に対し、当該防火対象物の改修、移転、除去、工事の停止又は中止その他の必要な措置をなすべきことを命ずることができる。(以下略)

(センター解答)
①何人も②命令を求めることができ、Yは③必要な調査を行い必要と認めたときは命令をすべきである。(44字)

※ 丸数字及び赤字などは、理解を助けるため、まるやが付したものです。

(まるや解説:標準)
第36条の2と同時に新設された条文(平成27年4月1日施行)で、言葉は汚いですが、いわゆるタレコミ条項。他人、他社をツツク際に使うこともできる条項です。
とはいえ、本件のような場合、特に、この雑居ビルで働かざるを得ないような人は、自分の命に関わりますから、タレコミもやむを得ないでしょう。(--;

なのですが、今は、問題を解かなくてはならないので、当てはめをします。

【当てはめ第一段階:本件の登場人物等を当てはめていきます。】
①何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分(消防法第5条第1項の規定による命令)又は行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する行政機関(Y)に対し、その旨を申し出て、②当該処分(消防法第5条第1項の規定による命令)又は行政指導をすることを求めることができる。
当該行政庁又は行政機関(Y)は、第一項の規定による申出があったときは、③必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、当該処分(消防法第5条第1項の規定による命令)又は行政指導をしなければならない。

【当てはめ第二段階:枝葉の部分を取り去って、まとめます。なお今回、Yは行政指導しかしない=命令をせず放置とあるので、求められているのは命令です。】
①何人も、Yに対し、消防法第5条第1項の規定による命令をすることを求めることができ、Yは、③必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、消防法第5条第1項の規定による命令をしなければならない。

(現場合わせ)
①何人も、命令を求めることができ、Yは、③必要な調査を行い、必要と認めるときは、命令をすべき。(45字)
(問いの形からは、「べきここととされている。」で括りたいですが、文字数が足りないので、「すべき」で括りました。また、条文の文言が「認めるとき」なので、センター解答のように「認めたとき」にはしていません。)

○行政手続法(平成五年法律第八十八号)
第四章の二 処分等の求め
第三十六条の三 何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる
2 略
3 当該行政庁又は行政機関は、第一項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは当該処分又は行政指導をしなければならない

2 令和元年度(問題45)条文型

(問題文)
Aは、木造2階建ての別荘一棟(同建物は、区分所有建物でない建物である。)をBら4名と共有しているが、同建物は、建築後40年が経過したこともあり、雨漏りや建物の多くの部分の損傷が目立つようになってきた。そこで、Aは、同建物を建て替えるか、または、いくつかの建物部分を修繕・改良(以下「修繕等」といい、解答においても「修繕等」と記すること。)する必要があると考えている。これらを実施するためには、建替えと修繕等のそれぞれの場合について、前記共有者5名の間でどのようなことが必要か。「建替えには」に続けて、民法の規定に照らし、下線部について40 字程度で記述しなさい(「建替えには」は、40 字程度に数えない。)。なお、上記の修繕等については民法の定める「変更」や「保存行為」には該当しないものとし、また、同建物の敷地の権利については考慮しないものとする。

(センター解答)
共有者全員の合意が必要で、修繕等には各共有者の持分の価格の過半数での決定が必要である。(43字)

※ 赤字などは、理解を助けるため、まるやが付したものです。

(まるや解説:標準)
さて、問題文に、修繕等は、「変更」や「保存行為」に該当しないと書かれているので、共有物の「変更行為」でもなければ「保存行為」でもないのでしょう。
とすれば、本問の修繕等は、共有物の「管理行為」です。
次に、建て替えは、建物そのものを、そっくり作り変えてしまうのですから、どう考えても、共有物の「変更行為」です。

これは、択一式でも問われる論点で、共有物の、保存行為(単独)、管理行為(過半数)、変更行為(全員)が、それぞれどのような行為で、どれだけの共有持分が必要かを思い出せば、条文を思い出せなくても解くことはできますが、条文が分かっていれば、そのとおりに書けばいいわけですし、とりあえず、字数を考えずに素直に当てはめてみましょう。

【当てはめ第一段階:本件の登場人物等を当てはめていきます。】
「建替えには」各共有者(A)は、他の共有者(Bら4名)の同意を得なければ、共有物(別荘)に変更を加えることができず、共有物の管理に関する事項(修繕等)は各共有者(共有者5名)の持分の価格に従い、その過半数で決する。

【当てはめ第二段階:枝葉の部分を取り去って、まとめます。】
「建替えには」AがBら4名の同意を得る必要があり、修繕等にはそれに賛成する共有者の持分の価格の和が共有者5名の持分の価格の和の過半数になる必要がある。

(対句表現:お勧めはしません。)
AがBら4名の同意を得る必要があり、修繕等は賛成者の持分価格の和が過半数となる必要がある。(45字)

  • 「過半数で決する」は、「賛成者の持分の価格の和が過半数になれば、その案で決定していいよ」という意味なので、そのように書いています。
  • 問いに合わせ、「必要がある」で括りました。
  • いつものことながら、センターの解答は、雑かつ不正確です。条文を素直に読めば、発意者であるAが、他の共有者(Bら4名)の「同意」を得る必要があるのですから、「合意」ではなく「同意」と書くのが正しいでしょう。ただし、伊藤塾もTACもセンター試験どおりの解答としていますので、同一の問題が出たときは、お好みで。
○民法(明治二十九年法律第八十九号)
(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
2 略
(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
2~5 略

3 令和元年度問題46(条文型)

(問題文)
Aは、自己所有の時計を代金50万円でBに売る契約を結んだ。その際、Aは、Cから借りていた50万円をまだ返済していなかったので、Bとの間で、Cへの返済方法としてBがCに50万円を支払う旨を合意し、時計の代金50万円はBがCに直接支払うこととした。①このようなA・B間の契約を何といい、また、この契約に基づき、Cの上記50万円の代金支払請求権が発生するためには、②誰が誰に対して③どのようなことをする必要があるか。民法の規定に照らし、下線部について40字程度で記述しなさい。

(センター解答)
①第三者のためにする契約といい、②CがBに③契約の利益を享受する意思を表示することが必要。(42字)

※ 丸数字及び赤字などは、理解を助けるため、まるやが付したものです。

(まるや解説:標準)
こちらも条文問題です。若干、概念問題っぽい作りですが、契約の名称は、条文の見出し(第三者のためにする契約)そのものなので、前問同様、試験現場では、本件が、第三者のためにする契約で、受益者の権利が発生するのが、受益者が債務者に対して契約の利益を享受する意思を表示した時ということを思い出せれば上出来です。

もっとも、今は、条文も特定できていますので、当てはめて行きます。

【当てはめ第一段階:本件の登場人物等を当てはめていきます。】
第一項の場合(Aの時計をBに売った代金はCに支払う場合)において、第三者(C)の権利(代金を受け取る権利)は、その第三者(C)が債務者(B)に対して同項の契約(Aの時計をBに売った代金はCに支払う契約)の利益を享受する意思(代金50万円を受け取る意思)を表示した時に発生する。

【当てはめ第二段階:枝葉の部分を取り去って、まとめます。】
①第三者のためにする契約といい、Cの権利(代金を受け取る権利)は、②CがBに対して、③契約の利益を享受する意思(代金50万円を受け取る意思)を表示した時に発生する。

(現場合わせ)
①第三者のためにする契約といい、②CがBに対して③代金50万円を受け取る意思を表示することが必要(45字)
(問いに、「対して、ことをする必要」とあるので、「対して~することが必要」で括りました。センター解答は、「契約の利益を享受する意思」としていますが、おそらく自分が試験を受けていたとすれば、具体的な事実を問われていると判断し、「代金50万円を受け取る意思」と書いたであろうと思い、そのようにしています。

○民法(明治二十九年法律第八十九号)
第三者のためにする契約
第五百三十七条 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。
3 第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する

冒頭にも書きましたが、「上記50万円の代金支払請求権が発生するためには、②誰が誰に対して③どのようなことをする必要があるか」というような問いかけで、「代金50万円を受け取る意思」で減点されるとすれば、同一年度にトンデモ問題1題が加わると、記述式の6割は絶望的です。

さらに謎の激辛採点?が加われば、10点台も覚悟せざるを得ないので、「行政書士試験では、記述以外で180点を狙っていきましょう。」につながるのかな?と思います。(とはいえ、現在の感覚では、トンデモが同一年度に重ねて発生する確率は低いので、ここまでの心配は要らないとは思いますが。。。いずれ全過去問に当たって検証します。)

それでは、本日は、この辺りとさせていただきます。
今後とも、家内安全を第一に、無理のない範囲でお取組ください。

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